東京高等裁判所 昭和36年(う)1805号 判決 1961年11月16日
被告人 井坂和美
主文
原判決を破棄する。
被告人を懲役一年に処する。
理由
先ず職権をもつて本件控訴が適法であるかどうかについて調査するに、本件被告事件は水戸簡易裁判所が審理し、昭和三十六年七月十八日判決の言渡をし、この判決に対し検事内田達夫が同年七月二十六日控訴の申立をしたのであるが、控訴申立書によればその作成名義人が水戸地方検察庁検察官検事内田達夫となつているので、一見、地方検察庁所属検事たる同人がその資格において本件簡易裁判所の判決に対し控訴の申立をしたような外観を呈している。しかし同年九月二十八日付水戸区検察庁検察官事務取扱検事内田達夫作成名義の控訴申立書補正申立書及び当審検察官から提出した水戸地方検察庁執務規程謄本によれば、水戸地方検察庁本庁の検事は、水戸区検察庁検察官事務取扱の職務を有していることが明らかであるから、水戸地方検察庁検事内田達夫は、水戸区検察庁検察官事務取扱の職務も併せて担当して居り、本件控訴申立もその資格においてしたものであつて、控訴申立書にはその資格の記載を誤記又は遺脱したに過ぎないことを認めることができる。
それ故本件の控訴申立は適法と認める。
(その余の判決理由は省略する。本件は量刑不当により破棄)
(裁判官 加納駿平 久永正勝 河本文夫)